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「おはつ」観てきました

新橋演舞場に『おはつ』を観に行ってきました。
歌川椎子が、新年はなんと2日から、しかも昼の部は12時から、舞台に出ています。
12時開演というのは、演舞場の昼の部としては遅い方ですが、それでも12時です。
そんな時間から芝居をするなんて、大変だ。下手すると私はその時間に就寝したりします。・・・あ、変なのは、私か。

さらに、演舞場にしては出演者が少ない方で、楽屋に行ったら、歌川も一人部屋です。
いいなあ、一人部屋。暇な時間に、物凄いかっこうで寝ていても平気だし。音楽も隣の部屋まで聞こえるような音じゃないなら、ヘッドホンじゃなくていいし。鏡前が、すげえ散らかってたとしても、恥ずかしくないし。
それに、歌川は、よく独り言を言います。歌川が喋ってるので、真剣に相槌を打っていたら、独り言で、私のリアクションは何も聞いていなかったということがよくあります。トイレの中でも、何か言っています。トイレットペーパーとか便器とかに話しかけているということはないと思うので、独り言だと思います。あと、トイレの中ではよく歌を歌っています。日常はミュージカルじゃないので、誰かに向かって歌い掛けるってことはほとんどないので、一人歌なのだと判ります。そんな歌川さんなので、一人楽屋なら、いくら独り言を言っても、誰かが返事をしてしまうということはないでしょう。そんな歌川さんの癖にとっても素晴らしい環境です。
私は、役者で出てたのは、紀伊国屋ホールとか、博品館劇場とかまでだったので、一人楽屋なんて夢のまた夢でした。以前のタイニイ・アリスとか、楽屋というよりは、下手袖でした。鏡と椅子と机のような板がある楽屋という名の下手袖です。早替え場みたいなもんです。そこに、出演者全員、詰まっていました。開演前は、満員の客席より混雑してて、キツかったです。

私は、一生、ないんだろうな、一人楽屋。
大体、脚本書いてるもんですから、本番が始まると、劇場に私のいる場所はないんです。開場前はロビーの片隅、開場したらスタッフ部屋の居候です。THEATER・TOPSでは、4階から5階への階段に座ってます。冬はお尻が冷たいです。

歌川は「コスプレ役者」と言われています(って、演出・鈴木がそう言っているだけですが)。何しろ、看護婦さんとか、シスターとか、警察官とか、お弁当工場で働くオバサンとか、そういう制服が物凄くハマる奴です。衣裳を着ただけで、すっかりその職業の人に見えてしまうのです。演出・鈴木に「歌川さん、衣裳着ただけで、その人に見えるんだから、役者として、すごくお得だよね。素晴らしい!」と感心しますが、歌川本人は「どうせ私は、顔にも体型にも主張がないかですよ」とスネています。
確かに、そういった理由も否定できないではありません。歌川は妖怪でいえば、「ぬりかべ」に似ています。あ、ぬりかべは、体型に主張があるか・・・顔だけ「ぬりかべ」です。前に、劇場での場当たり(照明・音楽・転換のきっかけを合わせたりする稽古です)の時に、鈴木が舞台の歌川に駄目を出しました。「歌川さん! 目を開けて!!」。歌川は必死で答えました。「開けてます。精一杯」。鈴木「・・・うそ」。歌川「本当です!!」。確かに、歌川は、これ以上見開けないくらい目を開けていました。でも、元が元だから演出席から見たら、そうは見えないかもしれません。どうにも改善の方法がない駄目出しに、歌川は「もう、まぶたにデカく目を書いて、それで目を瞑っているしかない」と言いましたが、さすがにそれはどうかということになり、「とにかく頑張って見開く」ということにしました。再び同じ場面の時、鈴木の「歌川さん、目開いてる?」という問いに、一緒に舞台にいた役者全員が「開いてます!!」と答えてあげていました。

私も、むか〜し、歌川さんに申し訳ない駄目を出したことがあります。
昔、何を間違ったのか演出をやってしまった時、シリアスな緊迫したシーンで(あ、言い訳しておきますが、その頃は馬鹿の塊のような下らない芝居を作ってたのですが、それでも自分なりにシリアスな場面というのがありました。うちがそのころやっていた芝居の中では比較的シリアスな場面という意味です)、「歌川さん、身体が笑ってるんだけど」。これにも歌川はむっとしたようです。勿論、歌川は笑っているわけではないのです。本人、感情は圧倒的にシリアスだったのです。でも、私にはどうしても笑っているように見えたので・・・身体が。そして、それはどうしても言わずにはいられなかったのです。歌川さんは「それを直すのは、無理です!」と言いました。
そうですね。ごめんなさい。でも、今は「身体が笑ってる」ように見えることはないので、当時はやっぱり「笑ってる体型」だったんじゃないかと思います。

『おはつ』で、歌川は、松たか子さんの遊女・おはつのいる遊廓のお内儀・おもんの役です。台詞は関西弁なのですが、かなり上手いので、本人にそう言ったら「そうでしょ?  ネイティブだって褒められたの」と言ってました。東京生まれなのに、関西弁のネイティブってどうだろうと思われるかもしれないですが、役者にとって、それはかなり素晴らしいことです。お時間のある方は、聞きに、じゃないや、観に行ってやって下さいませ。
勿論、歌川以外の素敵な役者さんたちをご覧になりたいという方がほとんどだと思います。歌川は、ついででいいです。

あと、自転車キンクリートSTOREの『ダイアナ牧師の大穴』や『人形の家』や、『ピーターパン』に出演している、平田敦子さんも出演していますが、あっちゃん大爆笑です。何が爆笑って、冒頭から爆笑です(場面は爆笑じゃないです)。爆笑っていうかびっくりしました。一番大変なのは、平田あっちゃんじゃないかと思ったくらいです。何がびっくりかは・・・ご覧になって下さい。

      ☆          ☆           ☆

『おはつ』の話題ではないですが、新春の「古畑任三郎」に、岡田正が出演してました。私は、全然知らなかったので、いきなり岡田が出てきて、笑いました。1シーンで、ちょっとだけの出演ですが、「この役ハマってる」と思いました。二月二日から名古屋・御園座『新・近松心中〜それは恋〜』に、傘屋長兵衛で出演いたします。詳細はこちら。ちなみに岡田は、一月一日生まれなので、正という名前です。めでたいです。今年もよろしくお願いします。

(2004年1月3日)

 

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