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ネコが来た

私は、男性と一目惚れに陥ったということはないですが、
前に猫とお互い一目惚れしたことがあります。
犬ともないですね。
犬は、大概、自分の飼い主様が一番好きですから。

この間、家路を急いでいると、ふと道を歩いている猫と目が合いました。
普通の茶色の日本猫です。
デカくて尻尾が長い猫です。
私は、デカイ日本猫が好きなので、頭を撫でてみたら、
どうも、向こうも私を気に入った感じがしました。
そこで「うちに来るか?」とナンパしてみました。

そしたら、なんと!!
私の持っていた鞄に、その猫が入ってくるじゃありませんか!!
手提げ鞄に完全に入って、顔だけ出して私を見ています。
「おお! 言葉が通じたぞ!!」
ほんとかよ。
でも、本当に連れていってもいいみたいだったので、うちまで運びました。

私の家は、ペット禁止のマンションですが、
「まあ、ちょっとくらい連れ込んでもいいじゃないか。
ご飯でも食べてって貰うだけでいいんだから」
と、鞄を置くと、猫は出てきて、まず家中を点検しました。
そして、結果、私が掛けて寝ている安物の羽布団の上に落ちつきました。

・・・安物とは言え、羽布団。
やっぱ、快適なところは判るもんなんですね。
うちでは一番快適です。確かに。

招待したからには、ご飯をご馳走しようと、
うちにあったいわしの缶詰を開けていたら、
猫は、羽布団から降りて、キッチンにやってきました。
そして、いわしと牛乳を食しました。

で、ちょっと遊んだら元いたところにかえす積もりだったんですが、
なんと、食事を終えると、
猫は、羽布団の上に戻って、そして寝てしまったのです。

元々、デカイ猫です。
それが、めいっぱい身体を伸ばして、寝ています。
すげえ胴が長〜いです。
「さっき、会ったばっかりなのに、そんな無防備な寝方でいいのかい!!」
でも、とてつもなく無防備な恰好で寝ているのを見ると、
なんかいとおしくて、涙が出そうになりました。
で、泊めることにしました。

問題は・・・
トイレです。
羽布団の上に、用を足されては困ります。
一応、猫が寝てる横に、新聞紙とかティッシュを入れた箱を置いておきましたが、
これを「トイレ」と認識してくれるか、謎です。
どうなることか。
なるようになるか。

猫が、私がいつも寝ている布団に寝ているので、
私は、その隣で毛布を被って寝ていました。
と、暗闇の中、ふと猫が起き上がって、歩いていく気配がします。
「どこ行くのだ?」
その時!!
暗闇に包まれた家のどこかから異様な音が響いてくるではありませんか!!

「これは・・・
トイレだ!!
ヤバイ!!
どこだああああああ〜!!」

私が電気をつけて探しまわると、
猫は、玄関のたたきで、用を足していました。
トイレが判らなかったで、彼なりに一番、「やってもよさそうなところ」を、
考えて選んだようです。
それは、めちゃめちゃ賢いです。
素晴らしい猫です。

ただ・・・

彼が排出したものは・・・
固体である筈なのに、完全な液体でした・・・
お腹壊してるな状態でした・・・
すっごい匂いでした・・・
私は、オエっとなるのを我慢できませんでした・・・
彼は、自分の長い尻尾にその液体がつかないように上にあげつつも、
「ごめんなさい。怒るよね・・・」
という表情で私を見ています・・・

正直、参りました。
でも、彼を連れてきて、ご飯を食べさせたのは私です。
それでお腹を壊したのかもしれません。
私が「仕方ないよ。どこでやっていいかは判らないもんね」と言うと、
彼はほっとしたように、その場を離れ、
また、羽布団の上で寝てしまいました。

まあ、砂もない玄関のたたきなので、後片付けを彼に望むのは無謀です。
私は、タオルをマスク代わりに、生まれて初めて、
猫の排泄物を処理しました。

でも、後悔も不満もありません。
彼は精一杯頑張ったんです。

翌朝、10時頃目を覚ました彼は(案外寝坊だ)、
窓の側に座って、外を見ていました。
私が、窓を開けると、
「いいの?」という顔で私を見て、
それから、あたりを伺うようにベランダにそろそろと出て、
一度だけ、私の方を振り返り、
そして一気にベランダを飛び越え、走って姿を消しました。

それから、二三日、その猫と会ったあたりを探してみましたが、
見かけることはありませんでした。

今度は玄関に、新聞紙を敷いて置くし、
猫の餌缶も買っておくし、
私の布団で寝てもいいから、
たまに、泊まりに来てくれないかな・・・

(2004年2月1日)

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