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「奇跡の人」観てきました。

心が弱くなっている時・・・それは私の場合、大概脚本が書けなくて、何ひとつ思いつかず、頭が真っ白になっている時だが・・・そんな時本屋に行くと、つい目が行ってしまって買ってしまう種類の本がある。
それは「素晴らしいアイデアが3分に一個浮かぶ!!」とか「あなたも知らなかった才能が開花する!!」とか「あなたの脳力が100%全開する!!」とかそういった本たちだ。そして・・・ついつい買ってしまう・・・駄目だ、私・・・

よくよく考えてみると、素晴らしいアイデアが3分に一個も浮かんでいたら、素晴らしいアイデアが浮かんだ3分後には次の素晴らしいアイデアが浮かんでいるんだから、素晴らしいアイデアのほとんどを忘れてしまうんじゃないかと思うし、忘れないようにしようとしたら、その素晴らしいアイデアをメモしてるだけで、一生が終わってしまう。飯も食えないし、トイレにも行けないし、寝られない。なんだよ、その一生、幸せかよ。

「脚本を書く」ってことを、ギャラが貰えない趣味の時代から数えるとかれこれ20年も・・・20年か・・・20年?・・・20年もかよ!! そんなにやっててこの程度かよ!! 駄目だな、私!! 全然才能ないじゃん!!
落ち着け、自分。
・・・という程度の、脚本を書くことに関してさえ「ない才能」でここまでやってきてるっていうのに、なんか知らんが「私も知らなかった才能」が、そんなに簡単に開花するはずがない。
・・・もしかすると、開花してない才能あるのかな。ピカソ並みの絵の才能とか、モーツァルト並みの音楽の才能とか、エジソン並みの発明の才能とか・・・あるのか?
もしかすると、ぞうきんを絞ることに関して他の追随を許さない物凄い才能があるとか、コモドオオトカゲと話ができるとか(コモドオオトカゲと会ったことがないので、話ができるかもしれない)、そういう才能がもしかしたら埋もれているかもしれないが、そんな知らなかった才能があっても何だというのだ。
待て。コモドオオトカゲと話ができたら、それは凄いかもしれない。コモドオオトカゲの研究者だったら、是非、コモドオオトカゲと会話したいと思っているだろう。それは凄い才能だ。
だが、別にそんな才能は、私はいらない。

脳力が100%全開フル稼働したら、それは凄い。凄いけど、私自身がそれについていけないと思う。オリバー・サックスだったか誰だったかの本で(覚えてないし・・・持ってるんだけど、どの本だったか・・・)目が見えなかった人が、手術で視力が回復したら、今までまったく入ってこなかったのに、急に視覚情報が入力されてしまったので脳がそれを処理しきれなくて混乱してしまい、結局その人は、なぜだか視力を再び失って、それで平穏な人生を取り戻したというエピソードを読んだことがある。3%だかしか使われてない脳が100%フル稼働したら、絶対、脳が焼ききれる。
ふつーの人間にはないニュータイプ(古いな、この言葉)とか、ミュータント(古いな、この言葉も。X−MENとか)にあるような(って、そんな人たちいないけど)超能力とか、霊能力とか、絶対私には、向いてないという確信がある。

「奇跡の人」に「鳥が翼を使うように人間は言葉を使う」みたいな台詞があったんですけど・・・やっと「奇跡の人」の話になりました。しかも、台詞は正確じゃないです。脚本読んで確かめたわけじゃないので・・・
私の甥は、今三歳で、「言葉」という言葉を知ってるかどうかは知らないが、「言葉」が何なのかはおおよそ理解してて、随分と喋れるようにはなったが、たまに伝えたいことが自分の語彙じゃ足りなくて、是非とも伝えたいことが全然伝えらずに、あわあわしている。癇癪を起こしたりする。
「おばちゃん、ぼくのいうこと、なんでわかんないのよおぉぉぉ〜!!」
と、理不尽にも私に怒る。
おまえの言葉がつたな過ぎるのだが。
でもって、「奇跡の人」のヘレンは、芝居が終わるまでに、綴れるようになったが、三歳甥は、まだ言葉を綴れない。
それは普通だが。

「100万一語綴った時」に、「ヘレンは言葉の意味というものが判る、かもしれない」みたいな台詞や、「母親は子供に話しかける時、言葉を数えますか?」みたいな台詞もあったが(これらも正確じゃないです。すみません)、アニー・サリバンは「言葉というものを教える」ということは判っていたから、「100万語でも一億語でも綴る」という覚悟をすることができたんだと思う。

私のなんだか知らないが、いまだに私の中に埋もれたままになってる才能は、本一冊読んだからって、開花なんかするわけない。
冷静に考えれば、そんなこと判ってるが、駄目駄目状態だと、つい頼りたくなる。

「奇跡の人」を観て感動するのは、「目が見えず、耳も聞こえないかわいそうなヘレンが言葉というものを理解するってことと、サリバン先生の決して諦めない物凄い努力」で「だから、目が見えて耳も聞こえる私は、もっと頑張らないとね」ってことじゃないと、私は思った。(あ、それもあるかもしれないですけど)

私だって、100万語だか一億語だか聞いた後に、やっと「水」が「水のことなんだ!」と判ったはずだ。その瞬間は、多分ヘレンと同じくらい感動してたんだと思うのだが、その時のことは、忘れちゃった。
すごく残念だ。
「なぜ私は『水って水のことなんだ!』って判った瞬間のことを、覚えてないんだろう・・・で、ヘレンはきっとこの時のことを忘れないんだろう。すげえうらやましい・・・」と思って涙出そうになった。

「鳥が翼を使うように、人は言葉を使う」のかもしれないが、私はどうも、まだ全然うまく使えない。
脚本を100万本書いたわけじゃないから、当たり前かもしれない。

だから「サリバン先生やヘレンのように、100万本書く覚悟で頑張っていかなくては!」と、そんな途方もない覚悟をしたわけじゃない。
何本書いたかなんて覚えてないし、数える積もりもない。
結局、一文字ずつ書いてくしかないし・・・
と、当たり前すぎるほど当たり前のことを、今更遅すぎるけど、思っただけだ。
(ないよな・・・あるのか? もっと効率のいい方法が・・・)

そんなことを思っちゃったのは、「奇跡の人」を観に行く前に本屋に寄って、「みるみる頭が良くなる本」とか「びっくりするほど素晴らしいアイデアが自分でも信じられないくらいどんどん湧き出る本」とかいうのを、つい手に取ってしまったからだ。
思いつきたいことがさっぱり思いつかなくて、一冊読むだけで、脳力が100%フル稼働したり、素晴らしいアイデアが信じられないくらいどんどん湧き出たらいいのになあ・・・とスケベ心満々だった。

目が見えなくて耳が聞こえないヘレンでも、目は見えて耳は聞こえるけどなんか才能が冴えない私でも、100万回だか1億回だか知らないけど、読んだり聞いたり綴ったりして、やっと心の中の金庫が開くかもしれないし、開かないかもしれないことに変わりはない。
やっぱ、目の前の一語をとにかく綴ってみるしかないんだろう。金庫が開くか開かないか知らないけど。

けど、「奇跡の人」を観る前に本屋に行ったので、買っちゃいました・・・
「びっくりするほど素晴らしいアイデアが自分でも信じられないくらいどんどん湧き出る本」1700円・・・・
馬鹿です。
馬鹿過ぎます、私。
今すぐブックオフに行って、売るぞ!!

で、鈴木裕美が演出してて、歌川椎子が出演してる「奇跡の人」は、10月22日まで、青山円形劇場で上演中です。詳しくはこちらをご覧ください。その後、新潟、愛知、大阪、広島、北九州で10月28日〜11月19日まで公演します。

 

★相変わらず、馬鹿のような、どーでもいい殴り書きを「顔を洗って出直します」ってブログで書き続けています。これは、100万語だか、一億語だかの中に入れていいものか。駄目なんじゃないかな・・・まあ、お暇な方は、そっちも覗いてみてください。

(2006年10月12日)

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